腹圧性尿失禁
- 2023年8月9日
- 女性の泌尿器科
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは
腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)は、おなかに圧がかかった時に尿が漏れてしまう尿失禁のことです。
この症状は、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉が弱くなってしまうことで尿道がゆるくなったり、おしっこの我慢がききにくくなったりします。
腹圧性尿失禁は、くしゃみ、咳、笑い、重い物を持ち上げるなどの際など、無意識におなかに力が加わった時でも尿漏れが生じます。
解剖学的に、女性の方が男性よりも尿道が短く骨盤底筋群の筋力が弱いため、腹圧性尿失禁が多くみられます。
骨盤底筋群とは
骨盤の底部にあるいくつかの筋肉を指します。これらの筋肉はハンモック状になっていて骨盤を底から支えます。また、尿道や直腸が通っていて、尿や便が漏れないようにコントロールしています。おなかの中の圧力を保つ働きもしています。
骨盤底筋群は妊娠、出産、加齢、肥満、運動不足などの要因によって弱まることがあります。骨盤底筋群が弱くなると、尿や便のもれや、骨盤内臓器脱(膀胱や膣が玉のように股から出てきます)、性的機能障害などを引き起こす可能性があります。骨盤底筋群を鍛えることで、これらの症状を予防または改善できます。
腹圧性尿失禁の原因
腹圧性尿失禁の主な原因として、以下の要因が挙げられます
骨盤底筋群が弱くなる:
骨盤底筋群は、膀胱や尿道を支え、コントロールする重要な筋肉群です。骨盤底筋群が弱くなると、腹圧の変化に対応できなくなり、尿漏れが生じやすくなります。
出産:
経膣分娩の場合、骨盤底筋群に負担が加わり腹圧性尿失禁が生じやすくなります。
肥満:
肥満の場合、腹部の圧力が増加し、骨盤底筋を適切に支えることが難しくなるため、尿漏れが生じるリスクが高まります。
女性ホルモンの変化:
女性にとって、妊娠や更年期などのホルモンの変化は、膀胱や尿道の支持組織に影響することがあります。これによって、腹圧性尿失禁が引き起こされることがあります。
手術や外傷:
骨盤領域に対する手術や外傷が、神経や筋肉にダメージを与え、腹圧性尿失禁を引き起こすことがあります。
神経損傷:
腹圧性尿失禁は、脳や脊髄からの神経信号が正しく伝達されない場合にも発生する可能性があります。下腹部の手術後や神経系の病気などが原因で、排尿をコントロールするのが難しくなる場合があります。
便秘、喘息など:
頻繁に腹圧が上昇すると骨盤底筋群に負担がかかり腹圧性尿失禁の危険性が増します。
腹圧性尿失禁の検査
腹圧性尿失禁の検査は、尿検査や診察、膀胱機能の検査、場合によっては画像検査を行い、適切な診断を行います。その他、排尿日誌で尿失禁を来しやすい時間を調べたり、パッドにつく尿量で漏れの量を調べたりします。
尿検査:
おしっこの細菌感染がないかを調べます。
診察:
わざとおなかに力を加えていただき(咳など)おしっこの漏れがないかを確認します。また、骨盤臓器脱がないかを確認します。
尿流量検査:
尿の勢いや、排尿後に残っている尿を調べます。
腹圧性尿失禁の治療
治療方法は、症状の原因や重症度によって異なりますが、一般的な治療法には以下のようなものがあります
骨盤底筋群トレーニング:
骨盤底筋群の強化を行うことで、腹圧性尿失禁の症状を改善することができる場合があります。自分で意識的に行っていただくやり方と、当院では機械により自動的に鍛える方法もできます。
薬物療法:
内服薬で、膀胱の過活動や尿道の緊張を和らげ、尿漏れを減少させることができる場合があります。
手術:
重度の腹圧性尿失禁の場合、手術が検討されることがあります。手術には、膀胱や尿道の支持組織を補助する手術やなどがあります。
生活習慣の変更:
腹圧性尿失禁の管理には、適切な食事療法、適度な運動、体重管理などの生活習慣の変更が重要です。自分にできそうな内容を相談しながら行いましょう。
最後に
腹圧性尿失禁は、患者様の生活の質に影響を及ぼすものです。治療をすることで今までの生活がいい方向に変わっていく可能性があります。多くの方が心当たりのある症状のため、歳のせい、こんなものと自分を無理に納得される方も多いと思います。ちょっとした治療、心がけで症状が改善する場合もありますので、お気軽にご相談ください。