陰嚢水腫
- 2023年8月13日
- 男性の泌尿器科
陰嚢水腫
陰嚢水腫とは
陰嚢(いんのう)は、精巣を包む袋状の組織です。
精巣は陰嚢内に二つある玉のような臓器です。陰嚢は精巣の保持と適切な温度に保つための機能を持っており、精子の形成と成熟に適した環境にしています。
通常左右の精巣は横並びになることなく片方が少し高い位置に、もう一方が少し低い位置にあります。
陰嚢水腫は精巣の周りに液体が溜まり、陰嚢の膨らみを引き起こす症状を指します。
陰嚢水腫の種類
陰嚢水腫は交通性陰嚢水腫と、非交通性陰嚢水腫に分けられます。
陰嚢水腫がお腹の中(腹腔内)とつながっているものを交通性陰嚢水腫、つながっていないものを非交通性陰嚢水腫といいます。
小児の思春期(10歳頃)以前では交通性陰嚢水腫が大部分で、思春期以降では非交通性陰嚢水腫がほとんどです。
陰嚢水腫の原因
陰嚢水腫の主な原因は、以下のものがあります。
生まれつきのもの:
生まれつき陰嚢水腫がある場合があります自然に消失することもありますが、成長しても
残っている場合には手術が検討されます。交通性陰嚢水腫が多いです。
腫瘍や炎症:
陰嚢内の腫瘍や炎症が存在する場合、これらが液体を作り出す可能性があります。
外傷:
陰嚢に直接的な外傷が加わることで、組織の損傷や炎症が生じる場合があります。これによる炎症反応が原因で液体が溜まるようになります。
陰嚢水腫の症状
陰嚢水腫の症状には、以下のようなものがあります:
陰嚢の腫れや膨らみ:
交通性陰嚢水腫の場合、大きくなったり改善したりを繰り返すことがあります。ソフトボールくらいまで大きくなることもあります。
陰嚢の違和感:
大きくなるので、重い感じがします。座った際や歩く際に違和感があります。
痛みはない:
炎症反応による腫れではないので痛みは感じません。痛みがある場合、陰嚢水腫ではなく精巣上体炎の可能性があります。
陰嚢水腫の診断
陰嚢水腫の診断は、問診、診察、超音波検査や他の画像検査によって行います。
診察:
陰嚢が大きくなっていることを確認します。また、痛みがないか、鼠径部のあたりからつながっていないかも確認します。
超音波検査:
陰嚢の内容物を確認します。しっかりと液体が溜まった陰嚢水腫は硬く触れることもあるため、超音波で内部をしっかり確認することが重要です。
CT検査:
交通性か非交通性か確認する目的に行います。
陰嚢水腫の治療
治療の方法は、陰嚢水腫の種類や年齢によって異なります。
1~2歳の場合、交通性陰嚢水腫が多いです。交通性陰嚢水腫では成長とともにほとんどの方が改善するので、まずは経過観察をします。経過観察でも改善しない場合には手術を考えます。
鼠経ヘルニアなどの合併症がある場合には手術を検討します。
非交通性陰嚢水腫の場合、穿刺術か根治手術があります。
穿刺術は超音波装置で内部の状態を確認しながら、翼状針で穿刺をします。これは根治術にはならないので数か月後には再発します。
根治術は麻酔かけてから行います。1時間程度の手術時間です。ほとんどの方は再発しませんが、まれに術後しばらくたって再発することもあります。
最後に
陰嚢水腫はあるだけで邪魔になり生活の質が大きく低下しますが、生命には影響しません。ただ、原因によってはほかの疾患が隠れていることがあり、しっかり調べることが重要です。詳しく調べたり、治療の計画を立てたりすることは近くの泌尿器科でできますので、お気軽にご相談ください。